パンデミックとペストとこんがり美味しいお肉

(タルバガンを食べている人たち。気をつけて。汗)

気球規模の病気の大流行。パンデミック。
14世紀に起きたペストの大流行では、1億人が死んだ。
当時の世界人口の4億5000万人が、3億5000万人に減った。
皮膚が黒くなりしんでしまう人が多かったから、
黒死病と言われて、 とくにヨーロッパで猛威をふるった。
ヨーロッパの全人口の30%から60%が死亡したのだ。

これは、ネズミのような、タルバガンというモンゴルの動物から始まった、
とも言われている。
このタルバガンが美味しいから危ない。。

モンゴルのヨーロッパ征服とともにペストもやってきたのだ。


モンゴル人は、タルバガンを城を攻め落とすときにも使った、
というのを、昔、モンゴルの伝記で読んだ。
生物兵器だ。

城壁の高く、大きな城を攻めあぐねていたモンゴル軍。
城の周りをぐるりと取り囲み、 兵糧攻めにして、 城内の兵を飢えさせる。
そこで、
草原で死んでいるタルバガンの肉を香ばしく美味しそうに焼いて、
矢につがえて、 城内に打ち込んだ。

モンゴル人は、タルバガンを狩猟して好んで食べるけど、
草原で野垂れ死んでいるタルバガンの肉は決して食べない。
そういうタルバガンは、
ペストを宿していることが多いことを経験則で知っているからだ。

城内の兵士達は、 どう考えても、 外から肉が送り届けられるのは怪しいとおもいながらも、 飢えに勝てずに食べてしまう。
そうして、城内にペストが蔓延して、
モンゴル軍はまったく兵力を消耗せずに、鉄壁の城を落とした。
という伝説。


話は飛んで、
僕は、 2004年。 モンゴルの隔離病棟の中にいた。

ゲルへのホームステイの参加者の男の子が、
謎の病気にかかったという知らせを受けて、 草原に行くと、
そのゲルのおばあちゃんが舌をみて、

「こ、これは!」
と言った。

これは感染病だから、 すぐに首都のウランバートルに帰って、感染病の医者に診せないといけない!!! それに違いないのじゃ!!!! と断言した。

まさか、、ペストじゃないよな。

真夜中に感染病の病院について、 診察の結果、
その男の子は隔離されることに。
僕は、通訳として、なぜか、壁の向こう側、彼と同じ部屋に隔離されることになった。
なんで?

その部屋は、 二重窓で、二重の壁になっていて、
食事やクスリは、 二重になっている中間の空間に入れられる。
向こうが扉をしめたら、こちらが扉を開けて受け取る。

遊牧の国は、動物の感染症が蔓延すると、国が滅ぶ。
だから、とてもこの辺りは敏感で、早いのだ。
そして、 ペストのパンデミックを詳しく知っている国だ。


さて、今。
そんな隔離された経験をもつ、僕は、
パンを作るときに、日本でつくられた粉を使う。
正直言って、パン作りには、外国の粉の方が向いているし、
美味しい場合もある。

では、なぜなのか?

それは、 モンゴル軍が城を落とした時のシチュエーションに、
今の日本がそっくりだからだ。
(以前からだけど、特に今が。)

食糧自給率が低ければ、兵糧攻めなんか簡単だ。
ちょっと船を停めればいい。
そうしたら、 毒だろうが、なんだろうが、食べるしかないのだから。

タルバガンが美味しく焼かれて打ちこまれたら、
トイレットペーパーがなくなるぐらいの勢いで、
食べてしまうだろうから。

愚か者は経験に学び、
賢い物は歴史に学ぶ。

と昔の人がいってる、
ということは、 歴史は繰り返す。

ペストと、美味しいタルバガンのお肉は、
日本に何か大切なことを教えてくれている気がする。

(田村が3月8日にRCCラジオで話した内容です)