捨てないパン屋8「新しさを捨てる」


新しさを売りにする以上、
必ずパンは捨てられる。

それはお店自体も一緒だったりする。

僕はパン屋の3代目。

若き日の父のパン屋は、
朝から晩までお客がひっきりなしの人気店だった。

その頃、
世界各国のパンに加え、いろんな具材を入れた、
「新しいアイデア」
のパンがどんどん出てきた。

それにプラスして、
「時間的な新しさ」も求められて、
焼き立てパンが登場。

種類と時間、ダブルの新しさ。

ところが、
バブルが過ぎた頃から、
お客が減っていった。

「新しさを売りにするほど、より早く古くなる」

今の新しさ、を売りにすればするほど、
時間が過ぎた時は、
次の新しさが登場し、
以前のものは強烈に古びてしまう。

焼き立てを売りにしたパンは、
冷めただけで、古くなってしまう。

斬新なアイデアが売りのパンは、
月日が経つと、古くなってしまう。

そして、
そんな新しさを売りにしていたパン屋も、
数年経つと、古びてしまう。

僕はそんな父の切なさを見たから、考えた。

そして、
新しさを捨てた。

焼き立てパン、新しいアイデアのパンと別れた。

そのかわりに、
古い手法に習うことにした。
クラシック、源氏物語、古い建築。
それらは決して新しくはないけれど、どの時代にも当てはまる。
ということは、古くもならない存在。

でも、いくら良いものだと解っていても、
人間は後ろには戻れない。

だったら、
戻らなければいい。

古い手法をもってして、
前に進んでしまえばいい。
むしろ革新してしまえばいい。

パンで言うなら、古典的な作り方でありながら、
現代のチャラいパンよりも圧倒的に美味しく、
存在感の有るパンにしてしまう。

そんな方向を目指して進んでいたら、
気づくと店も安定して、パンも捨てなくなっていた。

ほかの分野でも、
もしかしたら似てるのではないかと思えてくる。

新しさを追求し続けてきた僕達は、
それで失敗したバブル世代を見たはずなのに、
また同じように、新しく、斬新に、フレッシュに!!
と邁進している。

古くなる恐怖に背中を押され、安心できずに、クタクタになっても、
新しさの道を走り続ける。

なのに、せっかく作り上げた新しさは、
あっというまに古くなって、切なくなってしまう。

そんな疲れを癒やすために、
なんとか休みをとって、ヨーロッパに旅行に行って、
古い町並みの、
これまた古いカフェで、
おじいさんがゆっくりコーヒーを飲んでる横の席に座って、

「あー、帰りたくない」とぼやいたりする。

なんか、あべこべな気がする。。

みんなで、この流れをクイッと変えないといけない気がする。
方向を変えて、古い方向へ走るのだ!

捨てないパン屋?
それ自体は結果論で大切なことではないのです。

大切なのは、
新しさを捨てること。

そうすると、
そもそも捨てる必要がなくなるのだから。

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コメント

    • 井上マミ
    • 2017年 4月 23日

    あパン屋さんとは 全然違う業種をしています。おっしゃることよくわかります。新しいものを追いかけるより長く続いてきた普遍的なものを 大切ししていきたいと思います。陰ながら 応援しています‼

      • ドリアン田村
      • 2017年 7月 17日

      ありがとうございます!!
      一瞬で輝くのも美しいんですけどね。花火の季節ですし。(返信遅くてすみません))
      商売は、続けていきたいですもんね

    • ドリアン田村
    • 2017年 4月 24日

    振り子が振れるように、いい方向に向かっていきたいですよね〜

    • 池田俊樹
    • 2017年 6月 17日

    古典は人々の生活に根付いた連綿と続く永遠の新作だと思いますよ。

      • ドリアン田村
      • 2017年 6月 19日

      まさにですね!永遠の新作。いいことばですっ。

    • 木村史子
    • 2017年 7月 12日

    今朝、NHKを見てなんとなく前にも見たようなパン屋さん?と思っていたら!あっ!捨てないパン屋さん!!納得しました。私自身先月まで12年間小さなカフェを営業していたので・・・・・今は少し疲れたので長期休業中(復活は?)それなりに食材にこだわり、自分自身が口にしたいもの!安心&安全はあたりまえとゆうコンセプトにて日々精進しておりましたが・・・・・いつか広島を旅し直にお会いしたいな~と思いました。今現在猛暑につきくれぐれもお体ご自愛ください。

      • ドリアン田村
      • 2017年 7月 17日

      ありがとうございます!
      捨てないパン屋、すこ~し違和感を感じていて、それはそれで良いのですが、
      それは、働き方の結果、自然とそうなっていた、と感じたからです。(^^)

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