捨てないパン屋9「地元の為にもないがしろにする」

矛盾に聞こえるけど、
お店に通ってくれているお客さんの為にこそ、
開店日を減らさないといけない。

今、うちの店は、
週に2日、送り専用の日、
週に3日、地元で売る日。
これはフランスから帰った休業明けの時からの構想でした。

開店日を減らすと、
「地元をないがしろにしてる!」
と思われるかもしれませんが、逆です。

うちみたいなパンを作ってるパン屋さん、
(国産小麦使って、固い素っ気ないパン焼いてるパン屋)、
は少数派です。

日本で作られているパンの1〜3パーセントだけが国産小麦です。。
それだけ需要が無い=それを選んで買うお客さんが少ない、ということです。
なおかつ菓子パンがないなんて、ほとんどだれも買いに来ません。

圧倒的に少数。
もしパン屋ファン選挙があったら、
絶対に負けます!

だから、
買ってくれるお客さんも、
多くて100人に1人くらい。
広島市の人口は100万人。
だったら受け入れてもらえるのは1万人。
距離的に来れる人は10分の1とすると1000人。
定期的に来れる職場や買い物コースの方は10分の1とすると100人。
それを営業日で割ると、、、たったの33人。。

自分の志を貫きつつ、
広島のお客さんだけで食べていくのは、そもそも、虫が良すぎる話です。

それを無理やりに、
広島のお客だけでやっていこうとすると、
よく経営の本とかに載ってる、
「客層を広げる、」
という行為をしないといけません。

クロワッサンを焼き、
バケットを焼き、
惣菜パンや菓子パンを作り、
サンドを作り、
パイを作り、
と、
どんどんと際限なく。

でも、それをして、
今まで通りのクオリティーは維持できません。
5人の生徒に1人の先生と、
40人に1人では、
同じ教育ができないのと同じです。

さらに実は、
客層を広げると、今までのお客さんは、静かにいなくなったりします。
好みの異なる客層は、同じ店に同居しない法則があるからです。

すると、
せっかく今まで通ってくれていたお客さんは行くところがなくなります。

よかれと思ってやったことが裏目に出てしまうのは、悲しいことです。

でも、
パンはある程度量を作ったほうが、
発酵の質もよくなるし、単価も下がる。
材料も、良いものを安く買えます。

そんなことを考えていくと、
地方都市で、
地元の人に、素材にこだわって、いいパンを供給し続けるには、
発送をしないといけない、という結論になります。

また逆に、
都会の人には、
家賃が安く、工場を広くとれる地方から、
安価で良質なパンが届いてくることが喜ばれます。

その町の規模や立地によって、発送と店舗売りのバランスは変わりますが、

これも、また、みんなが得する方法なのです。