朝に乗るなら鈍行がいい


とても気持ちのいい天気の休日。
パン教室の仕事で尾道へ行った。
日頃朝日に当たらない仕事をしてる私には、
たまに乗った朝の電車は、
車内も車窓の外も、
どれもがきれいで、
わくわくしっぱなしの空間だったのです。
芽吹きまえの木々、
ところどころに花。
きらきらしてる川面、
散歩しているおじいさん。
窓の日よけカーテンごしに、
朝日が車内に差し込んできて、
電柱の影が次々走り込んでくる。
乗客の髪は朝日を浴びて、
明るい茶色になっている。
反射して、眩しいほどの朝日は、
冬のそれとは違って、力強くなってきた。
春がやってきたのだ。
窓のサッシに反射する光、
空いている席に差す曲がった光、
竹やぶの竹は、朝日に当たると艶やかに輝くのだ。
降りるサラリーマン、乗ってくる学生。
座席で眠る人、立って器用に新聞を読んでいる人。
朝日が家の屋根を照らし、光が瓦を走る。
水のまだ無い田んぼは、やさしく光を受け止める。
なんでもない光景がいつもより愛おしく見える。
お寺の大きな山門に朝日が当たる。
その前を犬と飼い主が行く。
紐をひいても犬は来ない、
灯篭におしっこをしたい、とがんばる犬。
しょうがないなと諦め、紐をゆるめる飼い主。
それを朝日がつつんでいる。
というような光景を夢中で眺めていたら、
仮眠しておこうと思っていた車内の時間はあっという間に過ぎ、
パン教室の会場のある尾道に着いたのでした。
教室の模様はまた書きます。
「石窯で焼く天然酵母パン/Boulangerie deRien」