(『中国新聞』2013年8月5日掲載)
空が白むとカモメが沢山鳴きはじめ、
明るくなるとすっかり静かになる。
鳥専門家でないので何故かは解らないが、
そんなカモメな6時頃目が覚めた。
けれど8時まで寝袋の中でヌクヌクしていたのは、
昨日で900キロ歩いた巡礼の旅も終わったから。
スペイン北西の漁師町ムシア(MUXIA)。
港に面したカフェに入り、
カフェオレとトーストを食べている。
マスターがゆるく働き、
子猫がカウンターの中を走り回ってる。
TVから大きな音でサッカーや牛追い祭りのニュース。
地元の人にたまに巡礼者、パン屋が配達に来たりして、
ゆったり賑やか。
飽きるほどスペイン的パンを食べてきた。
しかしこの最後の町で日本とそっくりな角食トーストを食べている。
「パンじゃないのよ、大切なことは。」
とはぐらかされているよう。
幸せってなんだっけ?
巡礼者はそんな”ポン酢”のCMようなことを考えつつ、
重い荷物を背負い坂道を登ったり下ったり。
その道中、
幸せを与えてくれるのは、
金でも宗教でもなく、
人間だ。
人は人と関わることで幸せになる。
スペインの町の外側は畑や牧草地が広がる。
店もコンビニも自販機も無い。
かわりに町にはギュギュッと住居が肩を寄せ合って暮らしてて、
どんな小さな村にもカフェやバル(簡単な飲み屋)がある。
個人経営の小さなお店。
地元の人が歩いて来て、
近所の人としゃべり、一杯飲み、
TV見て、夕涼みして、ボーっとし、
通りかかる人に声をかける。
その雰囲気は、
外は寒く暗くても、
家族で鍋を囲みポン酢で頂くその湯気の周りだけは、
ホカホカ幸せな感じ、というのに似ている。
だからかこの国は笑顔の量が多い。
老若男女皆大きい声でよくしゃべる。
おじさん、おばさん皆元気。
会話が元気をくれることを知っている。
チェーン店で飲むコーヒーもたまには良い。
だけど、
じいさんになっても歩いて通えて、
馴染みの店主のいるお店。
その方が、
幸せってなんだっけ、
の答えに近いと思えたスペイン巡礼の旅でした。
(最後の道標のホタテマーク。達成感と寂しい気持ち。)
(巡礼者はホタテを付けて歩く。ホタテは海に返しました。)
(石窯パン職人=広島市、ヨーロッパ修業中)
——
ああ、スペイン巡礼、今思い出しても、めちゃくちゃ楽しかったです。
ずっと歩いていたかった。
スペイン巡礼の日記もブログに書いてるので読んでみてください。
読んで欲しい!
読んでください!!!
「スペイン巡礼日記」
連載は18回まで、もう少し続きます!!
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