パンの穴から世界を見た⑦/エネルギーが面白い

(『中国新聞』6月20日掲載)

(『市民が作った電力会社』田口理穂 著)

ハノーバーまで行きます。
15分でいいのでお話聞かせてください!

「市民がつくった電力会社」という本を読み、
たまらずドイツに住む著者の田口理穂さんにメールを書いた。

この本は、
チェルノブイリ原発事故後のドイツで、
原子力のない社会を目指して始めた電力の素人数名の市民団体が、
大企業と戦いながら、
巧みに市民やメディアと協力し、
自然エネルギーだけを供給する電力会社”シューナウ電力会社”として、
立派な会社に成長した冒険物語だ。

ヨーロッパにいて、
僕はパンよりも、むしろこういう分野に引かれる。

怪しいメールにかかわらず

「じゃあ飲みながら話しましょう」
と田口さん。

一晩、話を聞くことができた。

本にも書いてあるけれど、
今後のエネルギー供給のモデルは、
小さい発電所がたくさんあるイメージ。

各家庭に一つずつ。
そして町内に一つの中規模発電所。
それをアシストし分配する電力・ガス会社。

わたくし、
そこにパン屋の可能性を感じたのです。
実はつながるのです!

なぜなら、
パン屋はけっこうエネルギーを消費する職業。

逆に言うと、
多くを生み出す可能性もあるのだ。

(パン窯が木質ペレットでしっかり動いている。ポルトガル・リスボン)

(しかも日本でもなかなか見ないほどの巨大なパン窯。燃費はガスより良いとか)

薪はもちろん、
実際にポルトガルで見学した木質ペレット、バイオガスだって可能性大。

売るほどのエネルギーを得られなくても、
もともと多く使うのだから、
無駄なエネルギーが減らせたら効果は大きい。

昔見学したスイスのパン屋では、
窯から出る廃熱をコンプレッサー(圧縮機)にかけて何倍にもして、
隣の建物の暖房をまかなっていた。

さらに今は「熱発電モジュール」という熱から直接発電できる機器も進歩し、
パン窯の内部や煙突に付けることができる。

いつしか、
パン屋から電力が送られる時代が来るかもしれません。

今メールでやりとりしている大阪の会社は、
熱発電モジュールの会社。
発電できる鍋などがもう売られている。
帰国したら窯で実験します。

エネルギーが面白い時代なのだ。