(中国新聞 2013年8月26日掲載)
昨年9月にヨーロッパに渡って1年近く。
この旅もそろそろ終わる。
店頭に並ぶパンは何千と見た。
でも、
”家族のために焼かれるパン”
とはどんなものなのだろう。
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アフリカの国モロッコへ、足を延ばした。
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バスで12時間、
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更にラクダで砂漠を進み。
僕らは砂漠の中のベルベル人遊牧民の家に来た。
この日砂漠では50度を越えたらしい。
朝日が登った瞬間から気温は上がり、
人間も犬たちもただ日陰に横になり太陽が傾くのをじっと待つ。
そうする他に術がないほど暑い。
時折風が吹くが、それすら熱い。
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まだ暑い午後5時、パン作り開始。
ちょうど、
13歳の長女が母親からパン作りを引き継いだばかり。
母の指導の下で、
彼女が生地をこね、丸く形を整え、薄く伸ばし、粉を振った布に一枚一枚重ねていく。
毎日家族のために4枚のパンを焼く。
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生地を持った彼女が窯小屋に来て、窯へ薪をくべる。
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窯からあふれるほど火が燃える前で30分ほど窯の様子をみる。
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窯にたっぷり熾火(おきび)がたまったら、1枚ずつ焼いていく。
ひっくり返しながら、
きれいに丸くて、裏表にこうばしく焼き色の付いたパンを焼くのだ。
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暑いから何杯も水を飲みながら、
煙で涙ぐみながら、
母に教わったように丁寧に焼いていく。
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その光景は大げさに言うと神々しくもあり、
僕は暑さを忘れて最後まで見ていた。
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パンをもらって一口食べた。
良い意味でこのパンは日本では売れないと思う。
それほどに素朴で、
売るための、
”すごいでしょ、おいしいでしょ、”
という外向きの印象はない。
もともと、
家族に必要なパンはこれでいいのだ。
このパンの味を忘れないでおこうと思った。
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最後に。
彼女が家族愛で焼いているのか、嫌々焼いているのかは分からない。
学校へ通い、アラブ語、フランス語が話せてスマートフォン(多機能携帯電話)も使える今どきの子。
ただ、
「きつい仕事だね」と聞くと、
彼女は苦笑いして、しかしエッヘンと得意そうにうなずいた。
◇
23日に帰国しました。もう少し、旅を振り返りながら報告します。
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ps
砂漠は想像を絶する熱さでした!
でも朝と夜は最高に気持が良かったです!!
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