スローフードというのは、
つまりはこういうことではないか、
と思った。
それは、
作り手の顔が見える食べ物のこと。
もっといえば、
作り手の手のぬくもりが伝わる食べ物のこと。
ところで、
パン、というと、
ちょっとカッコつけたい時などは、
ワインを一緒に飲んでみたいもんである。
でも私はワインには全く無知なので、
ワインに詳しい人に、
うちのパンに合うワインを聞きに行ってきた。
藤田 和久さん。
広島市にある「ふじた酒店」の主人であり、
J.S.A認定シニア・ワインアドバイザーでもあり、
そして、
自らフランスを周り、
これはっ、というワインを買い付けている、
という酒屋道において、 ひじょうに熱心に頑張っておられる方でもあります。
「そのようなパンには、ラングドッグのワインが良いでしょう」
と藤田さんは言う。
ラングドッグとはフランスの最南部にある地名で、
秘かに良いワインが沢山ある所らしいのです。
「ここはファミリー単位でやっている小さなワイン工場が多いんですよ」
家族でブドウを育て、
摘み取ってワインに仕込む。
地元だけで十分消費されてしまう量を作り続けているわけである。
つまりは、
顔の見える相手に飲んでもらえるワインを作っているのだ。
フランスに行ったことは無いけれど、
なんだか、ほのぼのとしたブドウ畑風景と、
その傍らにあるれんが造りのワイン工場と、
少し太り気味の気の良いワイン職人、
そんなのを勝手に想像してしまい、
「いいなあ、なんだかオシャレだなあ。
うちのパンと合うかなああ。
それよりも自分も行ってみたいなあ。」
とニヤニヤしていると、
「そうだ、ラングドッグのワイン工場であった社長達は、
あなたと同じような手をしてましたよ!」
と藤田さんに突然言われ、
ドキッと自分の手を見ると、
ガサガサのひび割れに炭がこびり付いている、
手相も見れないようなかわいそうな手。
そうだ、そうなのであった。
私も、酵母を育て、薪を燃やしてパンを焼く。
お店にくるお客さんの顔もだいたい覚えているし、
通販で買ってくれるお客さんの名前も覚えられるくらい。
それくらいの量しか焼けないけれど、
手の温もりの伝わる、ホンモノを食べてほしい。
という思いでパンを焼いているのだった。
そうなのかあ、同じ手かああ、
ちょっと恥ずかしいけど、
なんだか非常にうれしい。
会ったことないのに、
なんだかラングドッグのワイン職人達と、
仲間になったような、
というより同志になったような、
少し温かい気持ちになりました。
「石窯パンのドリアン」
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