夜行列車でトイレプリーズ

昔、モンゴルに住んだことがあった。

羽田から北京に飛んで一泊して、夜行列車に乗って北上して、万里の頂上を越え、モンゴルに入る。

深夜の国境で、レールの幅が変わるために2時間ぐらい車外で待たされる。

暇だから、屋台でジャージャー麺を食べた。

列車に戻った瞬間におなかに異変が!トイレから出れなくなった。

しかし、モンゴルの国境警備隊が車内に入ってきて入国審査を始める。

列車の全ての窓を閉め、トイレも施錠する。

トイレに行かせてくれ。

非情に首を振る、ボスらしき女性軍人。

トイレプリーズ。

微妙な英語で懇願する。

最後は言葉ではなく、覇気!

俺は本気だぞ。トイレを、プリーズ。

ただならぬ切羽詰まった感が通じたのか、女性軍人はあごで部下にトイレを開けろと指示をした。

めちゃくちゃ情けないシチュエーションだが、なぜか何かを達成した心地を感じつつ、車内の注目を集めながら、僕は静かにトイレの扉を開けた。