
「独立希望が老害に繋がる?!」
今回は、認知科学者・苫米地英人氏の著書『老い方を今すぐアップデート―老害にならず第二の人生を生きるヒント』(タック出版)を読んで、よく相談を受けるパン屋としての独立起業や、「働く」ということの本質につながっているように感じたので、取り上げてみたいと思います。
この本の中で苫米地氏は、「本当の老害とは、自分の健康やお金のことばかり気にして、利己的に生きることだ」と定義しています。
社会の理不尽さや矛盾、利権や権力構造を知りながらも、「自分だけが得をすればいい」「自分さえ幸せならいい」と考えて生きること。それが老害なのだというわけです。つまり、年齢の問題ではありません。30代や40代どころか、20代でも老害になってしまう可能性があるということです。
厳しい言葉ですが、本質を突いていると感じます。
「独立して自由になる!」「第二の人生を謳歌する!」「FIRE(資産的リタイア)するぞ!」
などなど、今の日本は、老害になることを奨励されているようにさえ感じるからです。
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私はパン屋で独立を目指す方々の相談を沢山受けてきました。
大きく成功する人と、なかなか軌道に乗らない人がいます。その違いは技術や資金ではなく考え方の違いが大きいとかんじていました。
今回この本を読んで、その答えが見えた気がしました。
それは、「利己的な動機で独立する人」と、「利他的な動機で独立する人」の違いです。
独立というと、「自由になりたい」「好きなことだけをして生きたい」というイメージを持つ方も少なくありません。しかしそれは誤解で、実際には、その逆だからです。
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私はよく船長の話を例にします。
船員であれば、言われた仕事をこなします。「ああ、早く船長になって好き勝手したいぜ。」と思うかもしれません。しかし船長になると、船の状態、積み荷、天候、さらには船主のことまで考えながら、最善の判断をし続けなければならないのです。さらに、船員の身心の健康状態や人間関係までも考えるのです。
船員は船長の心配はそんなにしませんよね?
船員と船長では、頭の中で処理すべきデータ量が圧倒的にちがうのです。
そこにあるのは「自分がどうしたいか」ではなく、「船全体をどう目的地まで導くか」という視点だからです。
パン屋として独立するということは、小さくても一隻の船の船長になるということです。
つまり、自分の都合を優先する人生ではなく、今まで以上に周囲のことを考え、責任を引き受ける人生を選ぶということなのです。
実は「独立」とは、「自分本位の生き方を卒業」することなのです。
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例えば、「これからは自分のためだけに生きたいので、海外旅行を楽しみます。だからお金をください」と言っても、お金をくれる人はいませよね?
パン屋を開業するのも同じです。「自由な生活を送りたいからパン屋を始めました。だからパンを買ってお金ください」と言っても、お金を払いたく無いですよね?
本質は同じです。
お金とは、自分が社会に提供した機能や価値への対価だからです。
だから独立する人は人一倍、「もっと地域の人の健康に貢献したい」「日本の食文化を守りたい」「こんな社会課題をパンを通して解決したい」という思いが必要で、すると自然とエネルギーも高まり、多くの人から応援されるようになります。
独立すると、自分のお店という「船」が、社会にどんな価値を提供しているかが問われます。
船長として、社会の中でどんな役割を果たすのか。その視点を持ち続けることこそ、独立を成功へ導く一番大切な条件であり、同時に大きな幸せを感じられる働き方なのです。
今回ご紹介した苫米地氏の本は、「老害」というテーマを通して、実は働くことや起業することの本質まで教えてくれる一冊だったように感じています。
僕も、老害にならないように、まだまだ社会のために働きますよ(^o^)/
中国新聞セレクト7月19日に掲載














